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物流システム導入時に行うFit&Gap分析とは

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物流システムやWMSを導入する際は、「標準機能でどこまで対応できるのか」「自社の倉庫業務に合わない部分をどう補うのか」を事前に確認することが重要です。

この記事のポイント

  • Fit&Gapとは、自社業務とシステム標準機能の「合う部分・合わない部分」を整理する分析手法
  • 物流システム導入では、入荷・検品・在庫管理・出荷・帳票・外部連携などでGapが出やすい
  • Gapはすべて開発で埋めるのではなく、業務変更・運用対応・設定変更も含めて判断する
  • 倉庫業では、荷主別ルールや現場の例外運用まで確認することが重要

Fit&Gapを行わないままシステムを選定すると、導入後に「現場の作業に合わない」「ハンディや帳票が使いにくい」「荷主別の運用に対応できない」「想定外のカスタマイズ費用が発生した」といった問題が起こりやすくなります。

特に倉庫業では、入荷・検品・保管・ピッキング・出荷・棚卸・荷主対応など、現場ごとに業務の進め方が異なります。そのため、物流システムを導入する際は、自社の業務とシステムの標準機能を照らし合わせ、どこが合い、どこにズレがあるのかを丁寧に確認しなければなりません。

この記事では、物流システム導入を検討している企業に向けて、Fit&Gapの意味、要件定義との違い、進め方、Gapが出やすい業務、失敗しないためのポイントを解説します。

Fit&Gapとは

Fit&Gapとは、自社の業務要件とシステムの標準機能を比較し、対応できる部分と対応できない部分を整理する分析手法です。

物流システム導入では、入荷、検品、在庫管理、ピッキング、出荷、棚卸、帳票出力、ハンディ利用、外部システム連携などに対して、候補システムがどこまで標準機能で対応できるかを確認します。

Fitは「標準機能で対応できること」

Fitとは、自社の業務要件に対して、システムの標準機能で対応できる部分を指します。

Fitに該当する例

  • ハンディターミナルで入荷検品ができる
  • ロケーション別に在庫管理ができる
  • SKU別・荷主別に在庫数を確認できる
  • ピッキングリストを標準機能で出力できる
  • 棚卸結果をシステム上で登録できる

標準機能で対応できる範囲が広いほど、追加開発の費用や導入期間を抑えやすくなります。

Gapは「標準機能では対応できないこと」

Gapとは、自社の業務要件に対して、システムの標準機能では対応できない部分を指します。

Gapに該当する例

  • 荷主ごとの特殊な出荷ルールに対応できない
  • 現在使用している独自帳票をそのまま出力できない
  • 配送会社システムとの連携機能が標準で用意されていない
  • ロットや賞味期限の管理方法が自社運用と合わない
  • ピッキング方式が現場の作業手順と一致しない

Gapが見つかった場合は、カスタマイズやアドオン開発で対応するのか、業務をシステムに合わせるのか、運用でカバーするのかを検討します。

物流システム導入でFit&Gapが重要な理由

倉庫業では、同じ「入荷」「出荷」という業務でも、荷主、商材、保管方法、出荷頻度、配送条件によって作業内容が大きく異なります。

倉庫・物流の種類 重視されやすい管理項目
食品倉庫 賞味期限管理、ロット管理、先入れ先出し
アパレル倉庫 SKU数、サイズ・カラー別在庫、棚番管理
EC物流 多品種少量出荷、短時間出荷、配送会社連携

このように、倉庫ごとに業務の特徴が異なるため、「有名な物流システムだから大丈夫」「機能が多いシステムだから問題ない」とは限りません。Fit&Gapを行うことで、自社の業務に合うシステムかどうかを導入前に見極めやすくなります。

物流システム導入におけるFit&Gapと要件定義の違い

Fit&Gapと要件定義は混同されやすい言葉ですが、役割が異なります。

要件定義は「必要な機能や運用を決める工程」

要件定義とは、物流システムに必要な機能や運用ルールを整理し、システムで何を実現するのかを決める工程です。

要件定義で整理する主な内容

  • 入荷予定をどのように登録するか
  • 検品は紙で行うのか、ハンディで行うのか
  • 在庫をロケーション別に管理するか
  • ピッキング方式はどうするか
  • 出荷検品をどのタイミングで行うか
  • 納品書や送り状をどのように出力するか
  • 既存の基幹システムやECシステムと連携するか
  • 荷主別のルールをどこまでシステム化するか

要件定義が曖昧なまま導入を進めると、ベンダーとの認識ズレが起こりやすくなります。その結果、導入後に追加開発が必要になったり、現場で使いにくいシステムになったりする可能性があります。

Fit&Gapは「現場業務とシステム機能のズレを確認する作業」

Fit&Gapは、要件定義で整理した業務要件に対して、候補システムの標準機能がどこまで対応できるかを確認する作業です。

たとえば、「出荷時にハンディでバーコード検品を行いたい」という要件がある場合、そのシステムが標準機能で対応できるかを確認します。対応できるならFit、対応できないならGapです。

実際の導入では「完全にFit」「完全にGap」だけでなく、「一部対応できる」というケースも多くあります。この場合はPartial Fitとして整理し、追加設定や運用変更で対応できるかを検討します。

要件定義前に簡易Fit&Gapを行うと、候補を絞りやすい

物流システム導入では、要件定義に入る前の段階で簡易的なFit&Gapを行うことも有効です。

複数の物流システムを比較する段階で、自社にとって重要な要件を一覧化し、各システムが対応できるかを確認します。これにより、明らかに自社業務に合わないシステムを早い段階で候補から外せます。

契約後の要件定義フェーズでは、より詳細なFit&Gapを行い、実装方針や業務変更方針を決めていきます。

Fit&Gap分析の進め方

物流システム導入におけるFit&Gap分析は、現場業務を整理し、要件を洗い出し、候補システムの機能と照合する流れで進めます。

  1. 現場業務の流れを整理する
  2. 入荷から出荷までの業務要件を洗い出す
  3. 必須要件と希望要件に分ける
  4. 候補システムの標準機能と照合する
  5. Fit・Partial Fit・Gapに分類する
  6. Gapごとに対応方針を決める

1. 現場業務の流れを整理する

まず、現在の業務フローを整理します。入荷から出荷までの流れを、できるだけ具体的に可視化しましょう。

整理すべき業務フローの例

  • 入荷予定の受領
  • 入荷受付
  • 検品
  • 保管
  • 在庫移動
  • ピッキング
  • 梱包
  • 出荷検品
  • 送り状発行
  • 出荷確定
  • 棚卸
  • 実績報告

このとき、管理者だけでなく、実際に作業を行っている現場担当者にもヒアリングすることが重要です。現場でしか分からない例外処理や手作業が、導入後のGapになることが多いためです。

2. 入荷から出荷までの業務要件を洗い出す

次に、物流システムに求める要件を業務単位で洗い出します。

業務 要件例
入荷 入荷予定データを取り込みたい、ハンディで検品したい、ロット別に在庫管理したい
出荷 ピッキングリストを自動出力したい、出荷検品をバーコードで行いたい、送り状システムと連携したい

3. 必須要件と希望要件に分ける

洗い出した要件は、すべて同じ重要度ではありません。対応できなければ業務に大きな支障が出るものを「必須要件」、あると便利だが代替手段で対応できるものを「希望要件」として整理します。

判断の例

必須要件:食品倉庫における賞味期限管理、ロット管理など

希望要件:あると便利だが、当面は運用変更や代替手段で対応できる機能など

すべてを必須要件にしてしまうと、候補システムが極端に限られたり、カスタマイズ費用が膨らんだりします。

4. 候補システムの標準機能と照合する

要件を整理したら、候補システムの標準機能と照合します。このとき、ベンダーの資料だけで判断せず、デモ画面や実際の操作方法を確認することが重要です。

「ハンディ対応」と書かれていても、自社が想定している検品方法に合うとは限りません。「ロケーション管理ができる」と書かれていても、複数倉庫や複数荷主の運用に対応できるかは別問題です。

5. Fit・Partial Fit・Gapに分類する

確認した結果は、Fit、Partial Fit、Gapに分類します。

  • Fit:標準機能で対応できる
  • Partial Fit:一部対応できるが、設定変更や運用変更が必要
  • Gap:標準機能では対応できない

物流システム導入では、Partial Fitの扱いが重要です。完全にGapではないものの、現場運用を変える必要がある場合や、一部手作業が残る場合があります。導入後に混乱しないよう、Partial Fitの内容を具体的に記録しておきましょう。

6. Gapごとに対応方針を決める

Gapが見つかった場合は、費用対効果や現場への影響を踏まえて対応方針を決めます。

対応方針 内容
業務をシステムに合わせる 標準機能に合わせて作業手順や帳票を見直す
運用でカバーする 頻度が低い例外処理を手作業や承認フローで対応する
設定変更・オプションで対応する 帳票設定、権限設定、ハンディ画面設定、オプション機能で対応する
カスタマイズ・アドオン開発を行う 標準機能では対応できない重要要件を開発で補う
要件を見直す 本当に必要な要件か、従来のやり方を続けたいだけではないかを再確認する

注意点

すべてのGapを開発で埋めようとすると、導入費用・保守費用・改修工数が膨らみます。Gapごとに「開発すべきもの」と「業務変更や運用で対応すべきもの」を分けて判断しましょう。

Gapが見つかった場合の対応方法

Fit&Gap分析でGapが見つかっても、必ずしもシステム導入を諦める必要はありません。Gapの内容に応じて、適切な対応方法を選ぶことが重要です。

業務をシステムの標準機能に合わせる

まず検討したいのが、業務をシステムの標準機能に合わせる方法です。これまでの作業手順を見直すことで、カスタマイズ費用や保守負荷を抑えられる場合があります。

たとえば、長年使っている独自帳票を標準帳票に変更する、紙で行っていたチェックをハンディ検品に変更する、といった対応です。

ただし、現場に十分な説明をしないまま業務変更を進めると、反発や混乱が起きる可能性があります。業務変更の目的やメリットを現場に共有することが大切です。

運用でカバーする

頻度が低い例外処理であれば、システム開発をせずに運用でカバーする方法もあります。

年に数回しか発生しない特殊な出荷処理のために大きなカスタマイズを行うと、費用対効果が合わないことがあります。このような場合は、手作業や管理者承認による運用で対応するほうが現実的です。

設定変更・オプション機能で対応する

標準機能だけでは対応できない場合でも、設定変更やオプション機能で対応できることがあります。

帳票レイアウトの変更、権限設定、作業ステータスの追加、ハンディ画面の設定などは、カスタマイズではなく設定範囲で対応できる場合があります。

ベンダーに確認する際は、「開発が必要なのか」「設定で対応できるのか」「オプション費用がかかるのか」を明確にしましょう。

カスタマイズ・アドオン開発を行う

業務上どうしても必要な要件で、標準機能や設定変更では対応できない場合は、カスタマイズやアドオン開発を検討します。

たとえば、荷主との契約上必須のデータ連携や、自社の競争力に直結する独自サービスに関わる機能は、開発してでも対応する価値がある場合があります。

ただし、カスタマイズやアドオン開発は、初期費用だけでなく、保守費用やバージョンアップ時の影響も考慮する必要があります。

要件そのものを見直す

Gapが出た場合は、「その要件は本当に必要か」を見直すことも重要です。

現場から出てくる要望の中には、「今までそうしていたから」という理由だけで必要とされているものもあります。物流システム導入は、現行業務をそのままシステム化するためのものではなく、業務を標準化し、効率化する機会でもあります。

物流システム導入でGapが出やすい業務

物流システム導入では、現場ごとの運用差が大きい業務でGapが発生しやすくなります。

業務 Gapが出やすいポイント
入荷・検品 入荷予定データの有無、検品方法、バーコード有無、ロット・賞味期限管理
ロケーション管理・在庫管理 固定ロケーション、フリーロケーション、荷主別在庫、ロット・期限・シリアル管理
ピッキング・出荷検品 シングルピッキング、トータルピッキング、ゾーンピッキング、ハンディ検品
棚卸・在庫差異管理 一斉棚卸、循環棚卸、差異承認、差異理由の記録、在庫修正タイミング
帳票・ラベル・送り状発行 納品書、ピッキングリスト、荷札、送り状、在庫表、作業指示書のレイアウト
外部システム連携 基幹システム、ECカート、OMS、配送会社システムとの連携方式やタイミング
荷主別ルール・請求管理 荷主ごとの出荷単位、報告方法、作業ルール、保管料・入出荷料・流通加工費の集計

特に注意したいポイント

「ハンディ対応」「ロケーション管理対応」「外部連携可能」と資料に書かれていても、自社の業務シナリオに合うとは限りません。機能名だけで判断せず、実際の画面・操作・データの流れまで確認しましょう。

物流システム導入でFit&Gapを行う際の注意点

Fit&Gap分析は、やり方を誤ると、かえって導入判断を複雑にしてしまうことがあります。特に以下の点に注意しましょう。

Fit&Gapで注意すべきこと

  • 現場の「今まで通り」をそのまま要件にしない
  • 社長・現場責任者・社内SEで判断基準をそろえる
  • 荷主別の例外運用を洗い出す
  • ハンディ・帳票・外部連携を後回しにしない
  • カスタマイズ費用だけでなく保守費用も確認する

現場の「今まで通り」をそのまま要件にしない

物流システム導入では、現場から多くの要望が出ます。しかし、現場の要望をすべてそのまま要件にすると、カスタマイズが増え、導入費用や保守費用が膨らむ可能性があります。

大切なのは、「今まで通りにできるか」ではなく、「業務を効率化するために本当に必要か」という視点で要件を見直すことです。

社長・現場責任者・社内SEで判断基準をそろえる

Fit&Gapの判断には、経営視点、現場視点、システム視点のすべてが必要です。

  • 社長:投資対効果や将来の事業拡大を重視する
  • 現場責任者:作業効率や現場負担を重視する
  • 社内SE:システム連携や運用保守を重視する

それぞれの視点がずれたまま進めると、導入後に「思っていたものと違う」という問題が起きやすくなります。

荷主別の例外運用を洗い出す

倉庫業では、荷主別の例外運用が多く存在します。特定の荷主だけ帳票形式が違う、出荷締め時間が違う、検品方法が違う、在庫報告の頻度が違うといったケースです。

これらを導入前に洗い出しておかないと、導入後に現場で手作業が残ったり、追加開発が必要になったりします。

ハンディ・帳票・外部連携を後回しにしない

物流システム導入では、ハンディ、帳票、外部連携が後回しにされがちです。しかし、実際の現場では、これらが使いにくいと作業効率に大きく影響します。

特に、ハンディ画面の操作性、帳票のレイアウト、配送会社システムとの連携、基幹システムとのデータ連携は、早い段階で確認しておくべきです。

カスタマイズ費用だけでなく保守費用も確認する

カスタマイズやアドオン開発を行う場合は、初期費用だけでなく、保守費用や将来の改修費用も確認する必要があります。システムのバージョンアップ時に追加対応が必要になる場合もあります。

目先の導入費用だけで判断せず、数年単位の総コストを見て判断することが重要です。

Fit&GapとFit to Standardの違い

物流システム導入では、Fit&Gapだけでなく、Fit to Standardという考え方も重要です。

考え方 特徴 注意点
Fit&Gap 現場業務とシステム標準機能の差分を確認する 現場要望を反映しやすい一方、カスタマイズが増えるリスクがある
Fit to Standard システムの標準機能に業務を合わせる 導入期間や保守負荷を抑えやすい一方、現場の作業手順変更が必要になる

物流システム導入では、どちらか一方だけで考えるのではなく、両方を使い分けることが重要です。

荷主対応や自社の競争力に直結する業務は、必要に応じてシステムを合わせる。一方で、社内都合で続いている作業や標準化できる業務は、システムに合わせる。このように判断することで、導入コストを抑えながら、自社に必要な機能を確保しやすくなります。

まとめ

Fit&Gapとは、自社の業務要件とシステムの標準機能を比較し、対応できる部分と対応できない部分を整理する分析手法です。

物流システム導入では、入荷、検品、在庫管理、ピッキング、出荷、棚卸、帳票、ハンディ、外部連携、荷主別ルールなど、多くの業務でFit&Gapを確認する必要があります。

社長、現場責任者、社内SE、ベンダーが同じ認識を持ち、Fit&Gapを進めることで、導入後に現場で使いやすく、事業成長にも対応できる物流システムを選びやすくなります。

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